今年90歳を迎えるヘルマン・ツァップ氏の特集です!
まずはライノタイプ社と70年もの間、コラボレーションを続け、
お馴染みのZapfinoをはじめ多くの書体を生み出した巨匠から、
特別メッセージが届いています。
さらに、先月末開催された、小林章さんのタイプ・セミナーの模様も
お届けしていますので、どうぞ最後までお楽しみください!
■■■ 小林章の欧文タイプ・セミナー2008 レポート ■■■
「欧文フォント質問箱」
ー 参加者がカスタマイズするセミナー
2008年10月28日(火)、東京・中野にある東京工芸大学のホールには、プロのカリグラファー、デザイナー、学生を含む200名以上がつめかけ大盛況でした。
ゲストには、嘉瑞工房の高岡昌生さん、
アートディレクターの菊地敦己さんと柿木原政弘さんを迎えていました。
冒頭では、小林さんが各国で行っているワークショップ、や参加されたカンファレンスなどのイベントについて、写真をみせながら解説してくれました。それぞれ、国は違えどタイポグラフィーに夢中で熱意ある人々の真剣な顔つきがスクリーンに映し出され、観ている私たちの興味をかりたてます。
盛りだくさんの内容のうち、特に基本の部分、印象的だった部分を抜粋して以下にまとめてみました。
Trajanを、分解して解説。
◎カリグラフィーと、書体制作の違い
カリグラフィーでは、既に次に来る文字が決まっていますが、書体制作では、どのような順番で文字が並ぶかわかりません。ですから、どんな字の並びが来ても対応できるように、と考えているそうです(これは、対象者や目的があらかじめ想定された「ロゴ制作」とも共通しているようです)。
■■ フォント質問箱☆>
事前に寄せられた質問はなんと150通!
中でも複数質問のあった項目を10のカテゴリーに分け、ゆうに1時間以上もかけて回答してくれました。主なものを紹介していきたいと思います。
▽基本を知りたい!
お薦めの本について
「ローマ字印刷研究 紀田順一郎セレクション(HANCOレアブックス)」
さらに、小林さんの「欧文書体」、「欧文書体2」の巻末には、役立つ参考文献のリストがあります。英語の書籍が多いので、タイプを勉強するにはやはり語学が出来た方がいい、とも。
欧文書体
▽手書き文字について
国によって、同じ文字でも筆記体の形状がずいぶん異なっていました!
これを研究して、各国別の手書き文字をあらかたとりこんだ書体制作をしている方もいるそうです。
各国の手書き文字を紹介。
▽日本で欧文書体を学ぶ上で注意することは?
日本語訳された文献では、表現が著者の意図と異なる場合があるので、できれば原書と照らし合わせて検証することを習慣づけるとよい!
▽フォントの使い方は?
・どんな年代の、誰が読むのか?・・・読む人の状況を想定しながら選ぶこと。
・書体の良し悪しを語るとき、白と黒とのバランスに注目すると良い。つまり、文字の中の白い空きの部分の形が美しいかどうか?など。
(余談)ヘルベチカの映画がDVDで登場!大変お薦めだそうです。
▽書体制作の将来について
今後は、欧文といってもAからZで終わらず、多言語化していく。
ヒラギノ明朝の欧文部分(従属欧文、という)は小林さんが担当しているが、日本語を使わない海外の方が、従属欧文部分を利用しているケースも増えている。ファンレターをもらったことも!
また、その言語を母国語としない方が文字を勉強していて、ベルギー人がチベット語のフォントを作るなど多様化している。
▽やってはいけない組版の例
ピリオドの後、全角スペースを入れてしまうと、みっともない空きが出来てしまうので望ましくない。
fi、fl など、合字があるのに使わないと、文字同士がぶつかり無様な形になる・・・等。
▽縦方向に欧文を組むときのバランスは?
T
E
L
E
P
H
O
N
E
のように、縦方向にアルファベットを組むことは少なく、あくまで横書き中心。
本の背に書かれるタイトルの組み方で比較すると、ドイツでは横書きにしたものを下から上に、イギリスでは上から下に文字が流れるように組まれることが多いようです。
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ざっと、手元のメモを見ながら書き上げてみました。このほか、ロゴタイプについて、和欧混合についてなど幅広くとりあげられ充実したセミナーとなりました。
後に予定が控えていたため、一番の見所のトークセッションを見逃してしまったのが惜しまれるばかりです。
今後もLino News!では、タイポ関連の情報も提供していきます。よろしくお願い致します!
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